【「子連れ狼 親の心 子の心」斎藤武市 1972】を観ました
おはなし
拝一刀(若山富三郎)が、おっぱい刺青娘(東三千)、脱藩の謎を探ります。
今回はちょっと毛色が変わって、刺客の依頼を受けた拝一刀が、おっぱいに刺青を入れた脱藩者を探すという、探偵ものみたいな趣向。結果的に拝一刀がいまいち目立てずに終わった感じです。
ドドーンというほど巨乳でもないものの、いきなりオッパイ(刺青つき)のどアップ画像からです。しかも、これを撮っているのが日本映画界の至宝、宮川一夫カメラマンだと思うと、さらにアリガタイ気分に。
「脱藩者・雪、上意により討ち取る。覚悟っ」。
掛け声とともにカメラが引くと、そこには鳥追笠を目深にかぶり、上半身スッポンポンの女を取り囲む3人の侍が。とりゃー。一斉に斬りかかる侍の攻撃をひらりひらりとかわした女は、瞬く間に三人を斬り殺しました。そして、ゆっくりとカメラにオッパイを見せつつ、侍たちの髷を切り取るのです。えーとヘンタイ?
「お願いでございます。なにとぞお雪を」。そう言いつつ平伏する武家の女。拝一刀(若山富三郎)はムッツリと答えます。「刺客引き受け五〇〇両」。なんか、ここで「キャアーーーッ」とヘンな叫び声が流れて、オープニングタイトルに。ちなみに、テロップを見ると、プロデューサーが前作までの勝新太郎に代わり、若山先生ご自身になったみたいです。
「刺青は、こうやって左の親指で、皮膚をきつーく押さえやす」とか言いながら、若い女の肌にスミを入れているのは、彫り物師の字之吉。しかし演じているのが、内田朝雄なもんで、どうみても仕事をしているというよりヘンタイプレイをしているようにしか見えません。ちなみに、悪い朝雄のもうひとり、コロンボな小池朝雄も後で出てきますよ。ま、それはともあれ、ここは彫り物師の仕事場。お雪の行方を探るべく、若山先生は聞き込みをしているのです。「いい女でしたねえ。あんな肌にスミを入れたのは、後にも先にも初めてだ」と嬉しそうな内田朝雄。「それ、そこんとこにすーっと立ちやしてね」ポワワーン。
内田朝雄は回想します。紫の御高祖頭巾で顔を隠したお雪(東三千)が部屋に入ってきました。するっ。着物を脱ぎオッパイ丸出しに。あれ、こんなのをどこかで見たことが……。うーむ。そうだ、「けっこう仮面」です。まさに頭隠して、身体隠さずな感じだし。
「何でもいいから人の意表を突き、あっと魂消るようなものを彫ってくれと言うことでやした。心の臓が止まるほどに恐ろしい、おどろおどろしたものでも、また男衆が狂おしいまでに欲情するようなものでも、とにかく思い切ってやってくれとの頼みでやした。しかも胸と背中(せな)の両方に。背中にゃ山姥を、胸にゃまさぐりの金太郎童子を彫りこみやした」。当然、内田朝雄の回想中は、画面はひたすらオッパイ、オッパイ、またオッパイ。ともあれ、彫っていれば体に触るわけで、その筋肉の付き方から、女は武芸に秀でた別式女だと断言する内田朝雄。「それにしても、武家出に違げえねえ女が、背中に山姥。前にまさぐり金太郎の彫り物を一生背負っていくなんざ、どういう了見でござんしょうかねえ」。いや、どういう了見も何も、彫ったのはお前だ。それも、こともあろうに「まさぐり金太郎」。
ともあれ、内田朝雄は余計なことはいっぱい思い出すくせに、肝心なことはサッパリ。とんだ無駄足を踏んだなあ。いえいえ、そうではありません。実は無駄足どころの騒ぎじゃなかったようです。なんと若山先生が聞き込みをしている間、外で待たせておいた大五郎が「迷子」になるという大事件が発生していたのです。
ことの起こりは、楽しげな三河万歳がやってきたこと。土地の子供たちが、楽しそうに三河万歳を観ているのを見て、いくら「お利口さん」な大五郎といえども誘惑には耐えられなかったようです。ついフラフラと三河万歳にくっついて行っちゃいました。ほとんど、ハーメルンの笛吹き男の世界ですね。そして、気づけば、あれココどこ?な状態に。「だいごろー」「ちゃーん」。お互いの言葉は届きません。さあ、どうしよう。「♪しとしとぴっちゃん、しとしとぴっちゃん♪」、うわ、寂しい歌まで流れてきたし。
ずんずん田舎方向に彷徨っていく大五郎。とナレーションが聞こえます。「父が古寺を一夜の宿にする時の多いことを知る子であった。刺客の任を果たした父が必ず仏の前に座すことを知る子であった」。ということで、大五郎は荒れ寺に入ってみることに。すると、あ、男の人が背を向けて座っている。ちゃんかも。そんな喜びもつかの間、男はぴよーんと後ろ向きにジャンプしたかと思うと、いきなり刀を抜いてきましたよ。しかし、大五郎はこれくらいでビビる子ではありません。むしろ睨みます。ぎろーっ。「その目。生と死の間に己を置いて無と化す剣客の死生眼のような、幾多の死地、修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ目」と、ひとり勝手にしゃべり続けるのは、柳生軍兵衛(林与一)その人。ま、その人言われても困ると思いますが。あ、大五郎ですか、相変わらずガン飛ばしまくってますよ。ぎろぎろーっ。それを無視して、語り続ける林与一。「年端もゆかぬ子わっぱにそのようなものがあろうはずがない。私の目が鈍ったのか」。あ、大五郎、ナルシストおじさんに飽きたらしく、スタスタと出ていっちゃいました。
しかし、間の悪いことに近所の原っぱでは野焼きの真っ最中。「来年はいい畑になるぜ」「火をつけるぞお」。ぼぼっ。そんなところに大五郎は紛れ込んでいってしまうのです。独り言の好きな林与一は、大五郎を見つつ、つぶやきます。「あのまま進めば火に囲まれる。見過ごすわけにもいくまい。だが、あの死生眼を確かめるには、またとない機会」。じーっ。はい大五郎が思いっきり火に囲まれてます。「どうやら、わしの目に狂いはなかったようだ。これほどの火に囲まれても、助けを求めず、叫ぶでもなく、子供心にもはや逃れられぬと悟ってじたばたせぬは、げにも恐ろしき、その覚悟」。ゆっくりと火の中に沈んでいく大五郎をよそに「不思議な子に出おうたもの」クルッ。うわっ、後ろむいて去っていくよ、このヘンタイさん。
さて、野焼きのあとにやってきた農民のみなさんは、地面から子供の手が覗いているのをみてビックリ仰天。「子供じゃねえか」「野火に巻かれたんだ」「早く手当をしてやんねえと」。えっさほいさ。大五郎をかついで走っていきます。と、そこに「待てっ」とお武家さま、というかヘンタイ林与一だあ。「その子は?」「野火に巻かれて泥の中に潜っておったんで。早く手当をしてやんねえと」「自力で泥の中に潜って助かったと申すか」。クワッと大五郎を見つめた林与一は、「その子を降ろせ」と言いつつ、刀を抜き放ちます。ひぇーっ。逃げていく農民さんたちの代わりに、旅のお坊さんが止めに入りましたよ。「何をなさる。なぜ、頑是ない子に白刃を向けなさる」「確かめずにはおかん。斬るっ」。ざしゅっ。斬られちゃうお坊さん。大五郎はというと、拾った木の棒を斜めに構え、ヘンタイさんを睨んでいますよ。その構えを見て、「水鴎流斬馬刀。もしや狼の連れたる子」と驚きの声をあげる林与一。ピンポーン。「ちゃーん」。あ、若山先生です。大五郎を見つけた若山先生が鬼の形相でやってきます。わわわ、怒ってますよ。それもスゴク。
「拝一刀」「柳生軍兵衛か。やはり生きておったか」。ここで解説すると、この二人はかつて、公儀介錯人を決める試合で、激しく争ったんだそうです。そこで林与一はスルドイ突きを若山先生に寸止めして勝利。かと思ったら、その突きが将軍の方向に向いていたという理由で怒られちゃったそうですよ。つまり、将軍に対する突きを身を挺して止めた若山先生がエライ、ということに。これに困った柳生烈堂は部下を林与一の身代わりに切腹させ、林与一を放浪の旅に出したと。それにしても、公儀介錯人というのは、別に拝家が代々承っている職務じゃなかったんですね。たまにオーディションをひらいて決めるんだあ。ちょっとビックリ。
ま、それはともあれ、刀を抜きあう二人。チャキン、チャキン。刃を打ち合います。と、若山先生が得意のジャンプをかましました。ぴよーん。そして空中から愛刀の胴太貫を投げつけます。アターック。失敗。バレてました。しかしクルクルとニャンコ先生のように回転しながら、乳母カーの横に着地した若山先生は、めげずに乳母カーから仕込み槍を取り出します。ついでに、後ろ手にこっそり脇差を隠しているのはナイショ。おりゃっ。その隠していた脇差を投げつける若山先生。そして林与一がそれを刀で弾いているスキに一気に接近。ばさっ。林与一の片腕を切り落とすことに成功です。ぐ、ぐぬぬ。悔しそうなヘンタイさん。「斬れ、なぜ斬らぬ」「うぬは一度死んでおる。死んだ者を斬ったとて詮無き事」。スタスタと去っていく若山先生ですが、まあ、この時代、片腕ばっさりで放置されたら、まあ出血多量で死亡ですよね。ちなみに迷子になった大五郎はよっぽど寂しかったのか、乳母カーに乗らずに、若山先生にだっこしてもらってます。やっぱり幼児だね。
さて、いつもの「本筋には関係ないけど、追っ手が襲ってくる時間」がやってきました。今回の現場は荒れ寺の本堂。若山先生が入ると、両脇にずらりと仏像が並び、正面には立派な阿弥陀如来が。若山先生は、スタスタと進み、阿弥陀如来の前に額づいて言います。「阿弥陀如来に申し上げる。我ら親子、六道四生順逆の境に立つもの。父母に会うては父母を殺し、仏に会うては仏を殺す。喝あーーーーつ」。阿弥陀如来像を真正面から切り下げる若山先生。そして、仏像はパッカリ割れて、中の忍者さんもパッカリです。ざわざわ。ざわざわ。一斉に動き出す仏像たち。ほとんど江戸川乱歩な世界ですが、これもみんな忍者さんの変装。というかコスプレ。そんな仏像メイクな忍者さんの手足を、若山先生は快調に斬り飛ばしていきます。ごろごろ。ごろごろ。残ったのは芋虫状態の忍者さんたちです。おっと、今度はお堂の外から尺八のメロディが聞こえてきましたよ。外に出てみると、虚無僧コスプレな忍者さんたちがズラリ。一斉に尺八から矢を撃ってきます。ささっ。その攻撃をかわしつつ、若山先生も応戦。乳母カーに仕込まれた矢を撃ちまくります。バシュ、バシュシュ。う、うわーっ。さらに残りを斬り殺しつつ、最後の虚無僧忍者を真正面から唐竹割。とりゃー。しかし、最後の忍者さんも頑張りました。真剣白刃取りで刀を受け止めていますよ。ぬぬっ、やるな。じゃあ、これでどうだ。力をグイッと入れる若山先生。ずり。ずり。若山先生の馬鹿力に押され、下がっていく刀。じわっ。じわっ。忍者さんの脳天に食い込んでいきます。そして。ぷっしゅー。はい、血の噴水だよ。
殺戮タイムも終わり、ゴロゴロと乳母カーを押していく若山先生。おや、いかにもオープンセットくさい村にやってきましたよ。それにしては、なぜか大道芸人さんばかりいるのが不思議です。と、ここでナレーション。「その頃、非人とは異なり、何がしかの大道芸を売って生きる連中を乞胸と呼んだ。鳥追い、辻能。辻芝居、江戸万歳、辻浄瑠璃、辻講釈などなどである。彼らは乞胸仁太夫の支配下に属し、全国的な組織を持つ特別の集団であった」。ふうむ、つまりここは大道芸人さんたちのパラダイスなんですね。
そして、そんなパラダイスに闖入してきた若山先生は、異物もいいとこ。まして、大道芸人さんたちのネットワークは、若山先生がなぜここに来たのかも察知しているようです。「尾張藩の雇われ刺客なんぞに、お雪をやられてたまるかってんだ。やれっ」。と、そこに「静かにせんか」と声が響きました。そう、乞胸たちを束ねる乞胸仁太夫(山村聡)その人です。
客間に向かい合う山村聡と若山先生。「お雪を探し出して、斬る所存かの」「刺客に他の目的はござるまい」「あんたのような手練れに狙われるとは、あれも不憫な奴よのう」。そう言いつつも、山村聡は話し始めます。「いかにもお雪は乞胸ものであった。幼少より小太刀を習い、その技を芸として大道で売った」ぽわわーん。りりしい姿で、小太刀の技を披露しているお雪こと東三千が映ります。というか、けっこう仮面状態じゃないのは初めてかも。「そのお雪の小太刀さばきが、折からお忍びで散策中の尾張候のお目に留まったのじゃ」。ということで、尾張藩に召し抱えられ、小太刀を教える別式女となった東三千。しかし何ゆえに脱藩し、追っ手を斬り殺し続けているのかは、山村聡も知らないそうです。そうは言いつつ、お雪がいるだろう温泉の場所を教えてくれる山村聡。ただ、最後に「拝さま。お雪はわしの娘じゃ」とかボソっと言うんですけどね。ボソっと。
さて、その温泉では東三千が「いい湯だな」の真っ最中。しかし、思い出すのは憎っくきアイツのこと。ぽわわーん。はい、東三千は道場で孤塚円記(岸田森)と対峙しています。「わしに立ち会いを挑むとは笑止」「ほざくな、そのマヤカシの殺人剣の正体を見極めずにはおくものか」。かたやヘンタイ風味全開の岸田森、かたや白鉢巻に白襷もりりしい東三千ですから、もう岸田森が悪いことに決定。ま、それはともあれ、構えた刀からボッと炎を出す岸田森。なんとヘンタイの上に魔法まで使うとは、まさに魔法剣士ですね。そして、その炎についつい見とれてしまう東三千に、岸田森は言います。「どこを見ておる。火を見てるぞ。そなたは敗れるぞ。フフフ、火を見るな」。そりゃあそうです。炎に幻惑されてはいけませんね。「目を見るのだ。火を見るな」。なんて、岸田森って親切なんでしょう。アドバイスに従って、岸田森の目を見る東三千ですが、実はそれこそが岸田森の手口だったのです。目を見ているうちに催眠術にかけられてしまう東三千。はっ!気づいたときには素っ裸にされ、岸田森にオッパイを揉まれていたのでした。それもイヤラシイ手つきで。もーみもみ。
ぽわわーんな回想を終えた東三千。と、いきなり目の前で、若山先生と大五郎がノンキにお湯に浸かっていますよ。げげっ、いつの間に。さらに、大五郎は無邪気な顔をして近づいてきて、黙々と東三千のオッパイを揉んでいます。「母のない子ゆえ、ご容赦願いたい」と渋く言う若山先生。でも、これが若山先生と大五郎父子、言い換えれば冥府魔道親子の手口ですからね。大五郎の愛らしさに騙されて、先生に斬られるというのが。ほら、若山先生は後ろ手にこっそり刀を持っているし。しかし、あまり心配することはなかったようです。さすが小太刀の達人な東三千は、とっくに若山先生の悪巧みなんか見破っていたようですよ。若山先生をガン無視して、さっさと着物をきています。そして東三千が着終わると同時くらいに、「脱藩者雪、上意によって討ち取る。覚悟ぉ!」と尾張藩のみなさんが斬りかかってきました。そして、すごいイキオイで全滅しました。なんだったんだ。
お風呂から出て、着物をきた若山先生に東三千が言います。「あなたさまが私を追っていることは聞いておりました。刺客子連れ狼のお名も」。さすが、大道芸ネットワークはスゴいですね。「尾張藩士たちの髷を切り落とした、その理由が聞きたい」「私は尾張藩脱藩者。激怒した尾張候が上意討ちの追っ手を差し向けるは当然のこと。その追っ手の髷を切り落として送り届ければ、やがて私が倒さんと願っている孤塚円記が、追っ手として差し向けられて参りましょう。それゆえに」。ええっ、そんな理由で。「ならば聞くが、髷を切り落とされし者の家名は断絶、残された家族は恨みを飲んで自害し果てた者もいる。その者の恨みはどうする」。いや、若山先生、いいこと言った。これじゃ、東三千、キミもまた立派なヘンタイだ。
と、そこに誰かやってきました。東三千がハッと振り向くと、そこにはヘンタイ魔法剣士、岸田森がいたのです。「孤塚円記、とうとう参ったか」「フフフ。また一段と美しゅうなったようじゃの」。ボッ。また刀から炎を出す岸田森。「どこを見ておる。火を見るなと教えたはずだぞ」。東三千はクラクラです。ううっ、炎を見まいと目を見れば催眠術にかけられちゃうし、ど、どうすれば。と、しかし、東三千には起死回生の秘策があったのです。えいやっ。小太刀を口にくわえ、着ていた着物をズリズリっと下げます。当然、そうなると、オッパイ丸出し。そして、同時にオッパイ周辺に彫られた、オッパイをまさぐる金太郎の刺青が。クワッ。ヘンタイ岸田森は、この刺青に視線釘づけ。そう、東三千への催眠術も解けてしまいました。その隙に、カンザシをバシュっと投げつける東三千。ズバっ。岸田森のおでこの真ん中、そこにカンザシが刺さり、同時に刀からの炎も止まりました、。よし、今だ。小太刀をドスのように構え、岸田森の懐に飛び込む東三千。グサッ。うわあ。はあはあ、やったよ。仇をやっつけたよ。
ちょっと待ってくださいね。今、オッパイをしまうから。よいしょ。はい、準備完了。東三千にはご苦労なことですが、今度は若山先生と戦っていただきます。よーい、スタート。スタタタ。ばしゅっ。はい、東三千サクっと斬られました。ポロリと小太刀を落としつつ、東三千は言います。「肌を見せずに死ねて、うれしい」がくっ。「キャアーーーッ」。なんか、オープニングにも流れたヘンな叫び声が、また流れましたよ。さっぱり、意味が分かりません。
「二度とそなたの体を、誰の目にも触れさせぬ」と、東三千を火葬する若山先生。お骨を持って、大道芸人のパラダイスに戻ります。待っていた山村聡は言いました。「わざわざお届けくださるとはかたじけのうござる。お尋ねいたすが、あれの最期は見苦しゅうはござりませなんだか」。「見事な最期でござった」と答える若山先生。うん、オッパイも出してなかったしね。そんなこんなで、思い出話もしたいしと、山村聡に引き留められ、若山先生は一泊することにしました。しかし、それがマズかったのです。
「円記とお雪を斬ったと申すか」と怒っている尾張徳川家の義直候(小池朝雄)。そう、柳生烈堂(遠藤辰雄)が小池朝雄にあることないこと、若山先生の悪口を吹きこんでいるのです。「これは幕府のみならず尾張候にまで弓引く魂胆かと思われます」「許さん。おのれぇ」。パカラっ。パカラっ。小池朝雄の命令で大道芸人のパラダイスに押しかけてくる尾張藩のみなさん。火縄銃まで持ち出して、彼らはヤル気です。拝を引き渡せぇ。引き渡さないとこうだぞ。ズダダーン。それに応えて、出ていこうとする若山先生を止める山村聡。出て行ってはなりませぬぞおお。えーと、それを見ていたお役人はメンドクサクなったようです。「無礼者めが」。それ、撃っておしまい。ズドン。うわわわー。撃たれた山村聡は、亡き娘への思いなどを語りつつ、最期に言います。「親の心、子の心でござろう。お雪が、お雪が早く来いと呼んでいるような……」。えーと、無理やりサブタイトルを言わせてるような気もします。
ま、それはともあれ、これには若山先生も軽くキレました。よーし、尾張候に物申してやるぞ。「尾張候にお目通りいたす。案内(あない)せい」。しかし、小池朝雄としては、罪人拝一刀を引き立てて来い、と命令したのに、やけに「威張った」若山先生がやってきたからビックリ。「狂うておるのか。その方。いったい誰に向かって、そのようなことを申しておるのじゃ」と、理解できないようす。でも徐々に分かってきました。えーと、この男、オレのことバカにしてね。そうじゃね。と、思ったら怒りがムクムクとこみあげてきました。「無礼者。余は徳川義直なるぞ。ここをどこと心得ておるっ!」。
はい、ここでシリーズお約束のシーン。若山先生は言います。
「我ら親子、冥府魔道に生きる者なれば、徳川も尾張も、葵の紋すら関わりなき者」。そして、「大五郎っ!」とひと言。カチリ。先生に応えて大五郎が乳母カーのスイッチを押すと、乳母カーからガトリング砲登場。ズガガガガガガガ。みんながビックリしているスキに小池朝雄を人質にして、名古屋城を脱出するのでした。
やってきたのは、採石場みたいなところ。いかにも最終決戦の舞台な感じがプンプンしてきます。ほら、周りの崖の上には敵がズラリ。こちらには人質の小池朝雄がいるというのにグレネードランチャーを撃ちまくってきましたよ。ひゅるる、ドカーン。ひゅるドカーン。「やめーい。撃つなあ」とか言っていた小池朝雄も、軽く消し飛んでいったようです。これはマズイ。このままだと本気でマズイ。覚悟した若山先生は大五郎に言います。「大五郎、よく聞け。父はこれより冥府魔道に入るぞ。もし父が還らぬ時は、お前もここで死ぬのだぞ。よいか」。うなづく大五郎を残し、乳母カーにダッシュする若山先生。ガトリング砲を崖上のグレードランチャー隊に乱射です。しかし、崖上の敵を倒したと思いきや、柳生烈堂と、配下の虚無僧軍団やら忍者軍団がワラワラと出てきました。「かかれっ」「応っ!」。襲い掛かる敵軍団に、若山先生はゲリラ戦で対抗です。塹壕を縦横無尽に駆け回り、敵を倒していく若山先生。なんで、こんなとこに塹壕があるのかなんて、聞かないでくださいね。必要だからそこにある、んです。たぶん。
ともあれ、若山先生は手傷を負いつつも、敵を倒しまくり、とうとう柳生烈堂と向かい合いました。「烈堂っ!見参」と先生が怒鳴れば、「推参!」と烈堂も答えます。とりゃあ。唐竹割を仕掛ける若山先生ですが、烈堂はそれを白刃取りで受け止め、かえって刀ごと先生を投げ飛ばします。しかし、先生はすかさずもう一本の刀で烈堂の目をグサッ。烈堂も負けじと、先生の胸をグサッ。「うおうわっ」とかヘンな声を出しながら画面から消えていく烈堂。ヨロヨロ。立ち上がった若山先生も、そのまま崖からゴロゴロゴローと転げ落ちていきます。さらに、下で待ち構えていた柳生の残党に「拝一刀、柳生無念の刃を受けてみよ」とか言われ、背中に刀をブッスリ刺されてしまう若山先生。どうにか残党を倒したものの、胸を刺されるは、背中には現在進行形で刀が刺さってビヨンビヨンしてるわで、もうダメみたい。ばたっ。
「ちゃーん」「ちゃーん」。大五郎が探しにきました。「だ、大五郎。背中の刀を抜け」と言われ、必死に刀を抜く大五郎。しかし、若山先生、もう死にそう。バビンスキー反射もなさそうな雰囲気です。とはいえ、ここにいても、先は無い。ヨロヨロ、ヨロヨロ。乳母カーを杖替わりに、若山先生は戦場を去っていきます。
そんな姿を崖の上から見ているのは、ナルシストな林与一。っていうか、片手を切り落とされたのに生きてたんですね。さすがヘンタイ。「よくぞ、よくぞ切り抜けた拝一刀。たとえいかなることがあろうとも生き延びよ。うぬを倒すは柳生でも黒鍬でもない。このわしだ。このわしが必ずやうぬを地獄へ送る、その日まで」。なんかすごいドヤ顔で語ってますが、崖の上で独りごと言っても聞こえないって。
ともあれ、ほとんどゾンビ顔になった若山先生は、焦点の合わない目で、ヨロヨロと歩いていくのです。死なないでね。
なんていうか、オールヘンタイ博覧会みたいな映画でしたね。乳母車のガトリング砲など派手な手は打ち尽くして、さあどうしようと思ったときに、残っていたのはヘンタイだったと。でも周りがヘンタイすぎて、肝心の拝一刀の存在感が薄れるというのは、なんていうか誤算だったような。
それにしても、内田朝雄が刺青について熱く語るシーンは、なんだか増村保造の「刺青」を思い出させました。そういえば、どっちもカメラマンは宮川一夫だったなあ。
いくらおにぎりブログのインデックスはここ
いくらおにぎり日記はここ
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おはなし
拝一刀(若山富三郎)が、おっぱい刺青娘(東三千)、脱藩の謎を探ります。
今回はちょっと毛色が変わって、刺客の依頼を受けた拝一刀が、おっぱいに刺青を入れた脱藩者を探すという、探偵ものみたいな趣向。結果的に拝一刀がいまいち目立てずに終わった感じです。
ドドーンというほど巨乳でもないものの、いきなりオッパイ(刺青つき)のどアップ画像からです。しかも、これを撮っているのが日本映画界の至宝、宮川一夫カメラマンだと思うと、さらにアリガタイ気分に。
「脱藩者・雪、上意により討ち取る。覚悟っ」。
掛け声とともにカメラが引くと、そこには鳥追笠を目深にかぶり、上半身スッポンポンの女を取り囲む3人の侍が。とりゃー。一斉に斬りかかる侍の攻撃をひらりひらりとかわした女は、瞬く間に三人を斬り殺しました。そして、ゆっくりとカメラにオッパイを見せつつ、侍たちの髷を切り取るのです。えーとヘンタイ?
「お願いでございます。なにとぞお雪を」。そう言いつつ平伏する武家の女。拝一刀(若山富三郎)はムッツリと答えます。「刺客引き受け五〇〇両」。なんか、ここで「キャアーーーッ」とヘンな叫び声が流れて、オープニングタイトルに。ちなみに、テロップを見ると、プロデューサーが前作までの勝新太郎に代わり、若山先生ご自身になったみたいです。
「刺青は、こうやって左の親指で、皮膚をきつーく押さえやす」とか言いながら、若い女の肌にスミを入れているのは、彫り物師の字之吉。しかし演じているのが、内田朝雄なもんで、どうみても仕事をしているというよりヘンタイプレイをしているようにしか見えません。ちなみに、悪い朝雄のもうひとり、コロンボな小池朝雄も後で出てきますよ。ま、それはともあれ、ここは彫り物師の仕事場。お雪の行方を探るべく、若山先生は聞き込みをしているのです。「いい女でしたねえ。あんな肌にスミを入れたのは、後にも先にも初めてだ」と嬉しそうな内田朝雄。「それ、そこんとこにすーっと立ちやしてね」ポワワーン。
内田朝雄は回想します。紫の御高祖頭巾で顔を隠したお雪(東三千)が部屋に入ってきました。するっ。着物を脱ぎオッパイ丸出しに。あれ、こんなのをどこかで見たことが……。うーむ。そうだ、「けっこう仮面」です。まさに頭隠して、身体隠さずな感じだし。
「何でもいいから人の意表を突き、あっと魂消るようなものを彫ってくれと言うことでやした。心の臓が止まるほどに恐ろしい、おどろおどろしたものでも、また男衆が狂おしいまでに欲情するようなものでも、とにかく思い切ってやってくれとの頼みでやした。しかも胸と背中(せな)の両方に。背中にゃ山姥を、胸にゃまさぐりの金太郎童子を彫りこみやした」。当然、内田朝雄の回想中は、画面はひたすらオッパイ、オッパイ、またオッパイ。ともあれ、彫っていれば体に触るわけで、その筋肉の付き方から、女は武芸に秀でた別式女だと断言する内田朝雄。「それにしても、武家出に違げえねえ女が、背中に山姥。前にまさぐり金太郎の彫り物を一生背負っていくなんざ、どういう了見でござんしょうかねえ」。いや、どういう了見も何も、彫ったのはお前だ。それも、こともあろうに「まさぐり金太郎」。
ともあれ、内田朝雄は余計なことはいっぱい思い出すくせに、肝心なことはサッパリ。とんだ無駄足を踏んだなあ。いえいえ、そうではありません。実は無駄足どころの騒ぎじゃなかったようです。なんと若山先生が聞き込みをしている間、外で待たせておいた大五郎が「迷子」になるという大事件が発生していたのです。
ことの起こりは、楽しげな三河万歳がやってきたこと。土地の子供たちが、楽しそうに三河万歳を観ているのを見て、いくら「お利口さん」な大五郎といえども誘惑には耐えられなかったようです。ついフラフラと三河万歳にくっついて行っちゃいました。ほとんど、ハーメルンの笛吹き男の世界ですね。そして、気づけば、あれココどこ?な状態に。「だいごろー」「ちゃーん」。お互いの言葉は届きません。さあ、どうしよう。「♪しとしとぴっちゃん、しとしとぴっちゃん♪」、うわ、寂しい歌まで流れてきたし。
ずんずん田舎方向に彷徨っていく大五郎。とナレーションが聞こえます。「父が古寺を一夜の宿にする時の多いことを知る子であった。刺客の任を果たした父が必ず仏の前に座すことを知る子であった」。ということで、大五郎は荒れ寺に入ってみることに。すると、あ、男の人が背を向けて座っている。ちゃんかも。そんな喜びもつかの間、男はぴよーんと後ろ向きにジャンプしたかと思うと、いきなり刀を抜いてきましたよ。しかし、大五郎はこれくらいでビビる子ではありません。むしろ睨みます。ぎろーっ。「その目。生と死の間に己を置いて無と化す剣客の死生眼のような、幾多の死地、修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ目」と、ひとり勝手にしゃべり続けるのは、柳生軍兵衛(林与一)その人。ま、その人言われても困ると思いますが。あ、大五郎ですか、相変わらずガン飛ばしまくってますよ。ぎろぎろーっ。それを無視して、語り続ける林与一。「年端もゆかぬ子わっぱにそのようなものがあろうはずがない。私の目が鈍ったのか」。あ、大五郎、ナルシストおじさんに飽きたらしく、スタスタと出ていっちゃいました。
しかし、間の悪いことに近所の原っぱでは野焼きの真っ最中。「来年はいい畑になるぜ」「火をつけるぞお」。ぼぼっ。そんなところに大五郎は紛れ込んでいってしまうのです。独り言の好きな林与一は、大五郎を見つつ、つぶやきます。「あのまま進めば火に囲まれる。見過ごすわけにもいくまい。だが、あの死生眼を確かめるには、またとない機会」。じーっ。はい大五郎が思いっきり火に囲まれてます。「どうやら、わしの目に狂いはなかったようだ。これほどの火に囲まれても、助けを求めず、叫ぶでもなく、子供心にもはや逃れられぬと悟ってじたばたせぬは、げにも恐ろしき、その覚悟」。ゆっくりと火の中に沈んでいく大五郎をよそに「不思議な子に出おうたもの」クルッ。うわっ、後ろむいて去っていくよ、このヘンタイさん。
さて、野焼きのあとにやってきた農民のみなさんは、地面から子供の手が覗いているのをみてビックリ仰天。「子供じゃねえか」「野火に巻かれたんだ」「早く手当をしてやんねえと」。えっさほいさ。大五郎をかついで走っていきます。と、そこに「待てっ」とお武家さま、というかヘンタイ林与一だあ。「その子は?」「野火に巻かれて泥の中に潜っておったんで。早く手当をしてやんねえと」「自力で泥の中に潜って助かったと申すか」。クワッと大五郎を見つめた林与一は、「その子を降ろせ」と言いつつ、刀を抜き放ちます。ひぇーっ。逃げていく農民さんたちの代わりに、旅のお坊さんが止めに入りましたよ。「何をなさる。なぜ、頑是ない子に白刃を向けなさる」「確かめずにはおかん。斬るっ」。ざしゅっ。斬られちゃうお坊さん。大五郎はというと、拾った木の棒を斜めに構え、ヘンタイさんを睨んでいますよ。その構えを見て、「水鴎流斬馬刀。もしや狼の連れたる子」と驚きの声をあげる林与一。ピンポーン。「ちゃーん」。あ、若山先生です。大五郎を見つけた若山先生が鬼の形相でやってきます。わわわ、怒ってますよ。それもスゴク。
「拝一刀」「柳生軍兵衛か。やはり生きておったか」。ここで解説すると、この二人はかつて、公儀介錯人を決める試合で、激しく争ったんだそうです。そこで林与一はスルドイ突きを若山先生に寸止めして勝利。かと思ったら、その突きが将軍の方向に向いていたという理由で怒られちゃったそうですよ。つまり、将軍に対する突きを身を挺して止めた若山先生がエライ、ということに。これに困った柳生烈堂は部下を林与一の身代わりに切腹させ、林与一を放浪の旅に出したと。それにしても、公儀介錯人というのは、別に拝家が代々承っている職務じゃなかったんですね。たまにオーディションをひらいて決めるんだあ。ちょっとビックリ。
ま、それはともあれ、刀を抜きあう二人。チャキン、チャキン。刃を打ち合います。と、若山先生が得意のジャンプをかましました。ぴよーん。そして空中から愛刀の胴太貫を投げつけます。アターック。失敗。バレてました。しかしクルクルとニャンコ先生のように回転しながら、乳母カーの横に着地した若山先生は、めげずに乳母カーから仕込み槍を取り出します。ついでに、後ろ手にこっそり脇差を隠しているのはナイショ。おりゃっ。その隠していた脇差を投げつける若山先生。そして林与一がそれを刀で弾いているスキに一気に接近。ばさっ。林与一の片腕を切り落とすことに成功です。ぐ、ぐぬぬ。悔しそうなヘンタイさん。「斬れ、なぜ斬らぬ」「うぬは一度死んでおる。死んだ者を斬ったとて詮無き事」。スタスタと去っていく若山先生ですが、まあ、この時代、片腕ばっさりで放置されたら、まあ出血多量で死亡ですよね。ちなみに迷子になった大五郎はよっぽど寂しかったのか、乳母カーに乗らずに、若山先生にだっこしてもらってます。やっぱり幼児だね。
さて、いつもの「本筋には関係ないけど、追っ手が襲ってくる時間」がやってきました。今回の現場は荒れ寺の本堂。若山先生が入ると、両脇にずらりと仏像が並び、正面には立派な阿弥陀如来が。若山先生は、スタスタと進み、阿弥陀如来の前に額づいて言います。「阿弥陀如来に申し上げる。我ら親子、六道四生順逆の境に立つもの。父母に会うては父母を殺し、仏に会うては仏を殺す。喝あーーーーつ」。阿弥陀如来像を真正面から切り下げる若山先生。そして、仏像はパッカリ割れて、中の忍者さんもパッカリです。ざわざわ。ざわざわ。一斉に動き出す仏像たち。ほとんど江戸川乱歩な世界ですが、これもみんな忍者さんの変装。というかコスプレ。そんな仏像メイクな忍者さんの手足を、若山先生は快調に斬り飛ばしていきます。ごろごろ。ごろごろ。残ったのは芋虫状態の忍者さんたちです。おっと、今度はお堂の外から尺八のメロディが聞こえてきましたよ。外に出てみると、虚無僧コスプレな忍者さんたちがズラリ。一斉に尺八から矢を撃ってきます。ささっ。その攻撃をかわしつつ、若山先生も応戦。乳母カーに仕込まれた矢を撃ちまくります。バシュ、バシュシュ。う、うわーっ。さらに残りを斬り殺しつつ、最後の虚無僧忍者を真正面から唐竹割。とりゃー。しかし、最後の忍者さんも頑張りました。真剣白刃取りで刀を受け止めていますよ。ぬぬっ、やるな。じゃあ、これでどうだ。力をグイッと入れる若山先生。ずり。ずり。若山先生の馬鹿力に押され、下がっていく刀。じわっ。じわっ。忍者さんの脳天に食い込んでいきます。そして。ぷっしゅー。はい、血の噴水だよ。
殺戮タイムも終わり、ゴロゴロと乳母カーを押していく若山先生。おや、いかにもオープンセットくさい村にやってきましたよ。それにしては、なぜか大道芸人さんばかりいるのが不思議です。と、ここでナレーション。「その頃、非人とは異なり、何がしかの大道芸を売って生きる連中を乞胸と呼んだ。鳥追い、辻能。辻芝居、江戸万歳、辻浄瑠璃、辻講釈などなどである。彼らは乞胸仁太夫の支配下に属し、全国的な組織を持つ特別の集団であった」。ふうむ、つまりここは大道芸人さんたちのパラダイスなんですね。
そして、そんなパラダイスに闖入してきた若山先生は、異物もいいとこ。まして、大道芸人さんたちのネットワークは、若山先生がなぜここに来たのかも察知しているようです。「尾張藩の雇われ刺客なんぞに、お雪をやられてたまるかってんだ。やれっ」。と、そこに「静かにせんか」と声が響きました。そう、乞胸たちを束ねる乞胸仁太夫(山村聡)その人です。
客間に向かい合う山村聡と若山先生。「お雪を探し出して、斬る所存かの」「刺客に他の目的はござるまい」「あんたのような手練れに狙われるとは、あれも不憫な奴よのう」。そう言いつつも、山村聡は話し始めます。「いかにもお雪は乞胸ものであった。幼少より小太刀を習い、その技を芸として大道で売った」ぽわわーん。りりしい姿で、小太刀の技を披露しているお雪こと東三千が映ります。というか、けっこう仮面状態じゃないのは初めてかも。「そのお雪の小太刀さばきが、折からお忍びで散策中の尾張候のお目に留まったのじゃ」。ということで、尾張藩に召し抱えられ、小太刀を教える別式女となった東三千。しかし何ゆえに脱藩し、追っ手を斬り殺し続けているのかは、山村聡も知らないそうです。そうは言いつつ、お雪がいるだろう温泉の場所を教えてくれる山村聡。ただ、最後に「拝さま。お雪はわしの娘じゃ」とかボソっと言うんですけどね。ボソっと。
さて、その温泉では東三千が「いい湯だな」の真っ最中。しかし、思い出すのは憎っくきアイツのこと。ぽわわーん。はい、東三千は道場で孤塚円記(岸田森)と対峙しています。「わしに立ち会いを挑むとは笑止」「ほざくな、そのマヤカシの殺人剣の正体を見極めずにはおくものか」。かたやヘンタイ風味全開の岸田森、かたや白鉢巻に白襷もりりしい東三千ですから、もう岸田森が悪いことに決定。ま、それはともあれ、構えた刀からボッと炎を出す岸田森。なんとヘンタイの上に魔法まで使うとは、まさに魔法剣士ですね。そして、その炎についつい見とれてしまう東三千に、岸田森は言います。「どこを見ておる。火を見てるぞ。そなたは敗れるぞ。フフフ、火を見るな」。そりゃあそうです。炎に幻惑されてはいけませんね。「目を見るのだ。火を見るな」。なんて、岸田森って親切なんでしょう。アドバイスに従って、岸田森の目を見る東三千ですが、実はそれこそが岸田森の手口だったのです。目を見ているうちに催眠術にかけられてしまう東三千。はっ!気づいたときには素っ裸にされ、岸田森にオッパイを揉まれていたのでした。それもイヤラシイ手つきで。もーみもみ。
ぽわわーんな回想を終えた東三千。と、いきなり目の前で、若山先生と大五郎がノンキにお湯に浸かっていますよ。げげっ、いつの間に。さらに、大五郎は無邪気な顔をして近づいてきて、黙々と東三千のオッパイを揉んでいます。「母のない子ゆえ、ご容赦願いたい」と渋く言う若山先生。でも、これが若山先生と大五郎父子、言い換えれば冥府魔道親子の手口ですからね。大五郎の愛らしさに騙されて、先生に斬られるというのが。ほら、若山先生は後ろ手にこっそり刀を持っているし。しかし、あまり心配することはなかったようです。さすが小太刀の達人な東三千は、とっくに若山先生の悪巧みなんか見破っていたようですよ。若山先生をガン無視して、さっさと着物をきています。そして東三千が着終わると同時くらいに、「脱藩者雪、上意によって討ち取る。覚悟ぉ!」と尾張藩のみなさんが斬りかかってきました。そして、すごいイキオイで全滅しました。なんだったんだ。
お風呂から出て、着物をきた若山先生に東三千が言います。「あなたさまが私を追っていることは聞いておりました。刺客子連れ狼のお名も」。さすが、大道芸ネットワークはスゴいですね。「尾張藩士たちの髷を切り落とした、その理由が聞きたい」「私は尾張藩脱藩者。激怒した尾張候が上意討ちの追っ手を差し向けるは当然のこと。その追っ手の髷を切り落として送り届ければ、やがて私が倒さんと願っている孤塚円記が、追っ手として差し向けられて参りましょう。それゆえに」。ええっ、そんな理由で。「ならば聞くが、髷を切り落とされし者の家名は断絶、残された家族は恨みを飲んで自害し果てた者もいる。その者の恨みはどうする」。いや、若山先生、いいこと言った。これじゃ、東三千、キミもまた立派なヘンタイだ。
と、そこに誰かやってきました。東三千がハッと振り向くと、そこにはヘンタイ魔法剣士、岸田森がいたのです。「孤塚円記、とうとう参ったか」「フフフ。また一段と美しゅうなったようじゃの」。ボッ。また刀から炎を出す岸田森。「どこを見ておる。火を見るなと教えたはずだぞ」。東三千はクラクラです。ううっ、炎を見まいと目を見れば催眠術にかけられちゃうし、ど、どうすれば。と、しかし、東三千には起死回生の秘策があったのです。えいやっ。小太刀を口にくわえ、着ていた着物をズリズリっと下げます。当然、そうなると、オッパイ丸出し。そして、同時にオッパイ周辺に彫られた、オッパイをまさぐる金太郎の刺青が。クワッ。ヘンタイ岸田森は、この刺青に視線釘づけ。そう、東三千への催眠術も解けてしまいました。その隙に、カンザシをバシュっと投げつける東三千。ズバっ。岸田森のおでこの真ん中、そこにカンザシが刺さり、同時に刀からの炎も止まりました、。よし、今だ。小太刀をドスのように構え、岸田森の懐に飛び込む東三千。グサッ。うわあ。はあはあ、やったよ。仇をやっつけたよ。
ちょっと待ってくださいね。今、オッパイをしまうから。よいしょ。はい、準備完了。東三千にはご苦労なことですが、今度は若山先生と戦っていただきます。よーい、スタート。スタタタ。ばしゅっ。はい、東三千サクっと斬られました。ポロリと小太刀を落としつつ、東三千は言います。「肌を見せずに死ねて、うれしい」がくっ。「キャアーーーッ」。なんか、オープニングにも流れたヘンな叫び声が、また流れましたよ。さっぱり、意味が分かりません。
「二度とそなたの体を、誰の目にも触れさせぬ」と、東三千を火葬する若山先生。お骨を持って、大道芸人のパラダイスに戻ります。待っていた山村聡は言いました。「わざわざお届けくださるとはかたじけのうござる。お尋ねいたすが、あれの最期は見苦しゅうはござりませなんだか」。「見事な最期でござった」と答える若山先生。うん、オッパイも出してなかったしね。そんなこんなで、思い出話もしたいしと、山村聡に引き留められ、若山先生は一泊することにしました。しかし、それがマズかったのです。
「円記とお雪を斬ったと申すか」と怒っている尾張徳川家の義直候(小池朝雄)。そう、柳生烈堂(遠藤辰雄)が小池朝雄にあることないこと、若山先生の悪口を吹きこんでいるのです。「これは幕府のみならず尾張候にまで弓引く魂胆かと思われます」「許さん。おのれぇ」。パカラっ。パカラっ。小池朝雄の命令で大道芸人のパラダイスに押しかけてくる尾張藩のみなさん。火縄銃まで持ち出して、彼らはヤル気です。拝を引き渡せぇ。引き渡さないとこうだぞ。ズダダーン。それに応えて、出ていこうとする若山先生を止める山村聡。出て行ってはなりませぬぞおお。えーと、それを見ていたお役人はメンドクサクなったようです。「無礼者めが」。それ、撃っておしまい。ズドン。うわわわー。撃たれた山村聡は、亡き娘への思いなどを語りつつ、最期に言います。「親の心、子の心でござろう。お雪が、お雪が早く来いと呼んでいるような……」。えーと、無理やりサブタイトルを言わせてるような気もします。
ま、それはともあれ、これには若山先生も軽くキレました。よーし、尾張候に物申してやるぞ。「尾張候にお目通りいたす。案内(あない)せい」。しかし、小池朝雄としては、罪人拝一刀を引き立てて来い、と命令したのに、やけに「威張った」若山先生がやってきたからビックリ。「狂うておるのか。その方。いったい誰に向かって、そのようなことを申しておるのじゃ」と、理解できないようす。でも徐々に分かってきました。えーと、この男、オレのことバカにしてね。そうじゃね。と、思ったら怒りがムクムクとこみあげてきました。「無礼者。余は徳川義直なるぞ。ここをどこと心得ておるっ!」。
はい、ここでシリーズお約束のシーン。若山先生は言います。
「我ら親子、冥府魔道に生きる者なれば、徳川も尾張も、葵の紋すら関わりなき者」。そして、「大五郎っ!」とひと言。カチリ。先生に応えて大五郎が乳母カーのスイッチを押すと、乳母カーからガトリング砲登場。ズガガガガガガガ。みんながビックリしているスキに小池朝雄を人質にして、名古屋城を脱出するのでした。
やってきたのは、採石場みたいなところ。いかにも最終決戦の舞台な感じがプンプンしてきます。ほら、周りの崖の上には敵がズラリ。こちらには人質の小池朝雄がいるというのにグレネードランチャーを撃ちまくってきましたよ。ひゅるる、ドカーン。ひゅるドカーン。「やめーい。撃つなあ」とか言っていた小池朝雄も、軽く消し飛んでいったようです。これはマズイ。このままだと本気でマズイ。覚悟した若山先生は大五郎に言います。「大五郎、よく聞け。父はこれより冥府魔道に入るぞ。もし父が還らぬ時は、お前もここで死ぬのだぞ。よいか」。うなづく大五郎を残し、乳母カーにダッシュする若山先生。ガトリング砲を崖上のグレードランチャー隊に乱射です。しかし、崖上の敵を倒したと思いきや、柳生烈堂と、配下の虚無僧軍団やら忍者軍団がワラワラと出てきました。「かかれっ」「応っ!」。襲い掛かる敵軍団に、若山先生はゲリラ戦で対抗です。塹壕を縦横無尽に駆け回り、敵を倒していく若山先生。なんで、こんなとこに塹壕があるのかなんて、聞かないでくださいね。必要だからそこにある、んです。たぶん。
ともあれ、若山先生は手傷を負いつつも、敵を倒しまくり、とうとう柳生烈堂と向かい合いました。「烈堂っ!見参」と先生が怒鳴れば、「推参!」と烈堂も答えます。とりゃあ。唐竹割を仕掛ける若山先生ですが、烈堂はそれを白刃取りで受け止め、かえって刀ごと先生を投げ飛ばします。しかし、先生はすかさずもう一本の刀で烈堂の目をグサッ。烈堂も負けじと、先生の胸をグサッ。「うおうわっ」とかヘンな声を出しながら画面から消えていく烈堂。ヨロヨロ。立ち上がった若山先生も、そのまま崖からゴロゴロゴローと転げ落ちていきます。さらに、下で待ち構えていた柳生の残党に「拝一刀、柳生無念の刃を受けてみよ」とか言われ、背中に刀をブッスリ刺されてしまう若山先生。どうにか残党を倒したものの、胸を刺されるは、背中には現在進行形で刀が刺さってビヨンビヨンしてるわで、もうダメみたい。ばたっ。
「ちゃーん」「ちゃーん」。大五郎が探しにきました。「だ、大五郎。背中の刀を抜け」と言われ、必死に刀を抜く大五郎。しかし、若山先生、もう死にそう。バビンスキー反射もなさそうな雰囲気です。とはいえ、ここにいても、先は無い。ヨロヨロ、ヨロヨロ。乳母カーを杖替わりに、若山先生は戦場を去っていきます。
そんな姿を崖の上から見ているのは、ナルシストな林与一。っていうか、片手を切り落とされたのに生きてたんですね。さすがヘンタイ。「よくぞ、よくぞ切り抜けた拝一刀。たとえいかなることがあろうとも生き延びよ。うぬを倒すは柳生でも黒鍬でもない。このわしだ。このわしが必ずやうぬを地獄へ送る、その日まで」。なんかすごいドヤ顔で語ってますが、崖の上で独りごと言っても聞こえないって。
ともあれ、ほとんどゾンビ顔になった若山先生は、焦点の合わない目で、ヨロヨロと歩いていくのです。死なないでね。
なんていうか、オールヘンタイ博覧会みたいな映画でしたね。乳母車のガトリング砲など派手な手は打ち尽くして、さあどうしようと思ったときに、残っていたのはヘンタイだったと。でも周りがヘンタイすぎて、肝心の拝一刀の存在感が薄れるというのは、なんていうか誤算だったような。
それにしても、内田朝雄が刺青について熱く語るシーンは、なんだか増村保造の「刺青」を思い出させました。そういえば、どっちもカメラマンは宮川一夫だったなあ。
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